勉強法

読み書き・計算でつまずく中学生へ|学習障害(LD)の勉強法

この記事の著者

房前 みなみ / 家庭教師のあすなろ 発達障害コミュニケーション指導者

「教科書を読むのに、人よりずっと時間がかかる」

「内容は説明できるのに、ノートやテストには書けない」

「小学校の計算を何度練習しても、中学校の数学でつまずいてしまう」

学習障害(LD)のある中学生のお子さんについて、こんなお悩みはありませんか?

学習障害のある中学生の勉強法は、単純に練習量を増やすのではなく、「何を理解する勉強なのか」と「読む・書く・計算する作業のどこが難しいか」を分けて考えることが出発点です。

例えば、理科の内容を聞けば理解できる子には、教科書の読み上げが助けになる場合があります。一方、文章は理解できても答えを書くのが難しい子には、口頭で考えを整理してから短く記入する方法が合うかもしれません。

この記事では、困りごとの見分け方から、国語・英語・数学・理科・社会での具体的な学び方、家庭学習、学校との相談までを紹介します。診断名だけで方法を決めず、お子さんが使いやすい方法を一つずつ探しましょう。


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もくじ

まず確認したいのは「わからない」と「表現できない」の違い

同じ「テストで答えられない」でも、問題の意味がわからない場合と、意味はわかるのに読む・書く作業で止まる場合では、必要な支援が異なります。

家庭では、学校の教科書やワークから負担の少ない問題を一つ選び、次の順に確かめてみてください。

  1. 自分で読む:短い問題文を読んで、何を聞かれているか説明できるか。
  2. 聞いて理解する:大人が同じ文章を読み上げると、内容を説明しやすくなるか。
  3. 口頭で答える:答えを話せるか、考え方を順番に説明できるか。
  4. 紙に書く:同じ答えを記入するとき、どこで時間がかかるか。
  5. 数字を扱う:計算の意味はわかるか、位をそろえて書くところで間違えるか。

例えば、社会の問題を読めなくても読み上げれば答えられるなら、知識の不足だけが原因とは限りません。数学の答えを口で言えるのに筆算で数字がずれるなら、数の理解と書く位置を分けて考えます。

これは診断用の検査ではありません。本人の疲れ、問題の難しさ、緊張などでも結果は変わります。無理にテストせず、「どの方法なら理解を示しやすいか」を見つけるための確認として使ってください。


学習障害(LD)とは?中学生の勉強にどう関係する?

学習障害(LD)は、単に成績が低いことや、勉強が嫌いなことを意味する言葉ではありません。学校教育で用いられるLDの考え方では、全般的な知的発達に遅れがない一方で、聞く・話す・読む・書く・計算する・推論するといった能力の一つまたは複数に、著しい困難が見られる状態が説明されています。

医療で用いられる「限局性学習症(SLD)」とは、用語や対象とする領域が必ずしも完全に一致するわけではありません。この記事では、主に家庭学習で見えやすい「読む・書く・計算する」困りごとを中心に考えます。

参考:国立特別支援教育総合研究所・発達障害教育推進センター「学習障害(LD)」

「読み」が難しいと、どの教科でも問題文が負担になる

国語だけでなく、数学の文章題、理科の説明文、社会の資料、英語の英文など、文字を読む場面はあらゆる教科にあります。文章を読むことに大きな時間がかかると、内容を考える前に疲れてしまう場合があります。

「書き」が難しいと、理解していても提出物やテストで困る

漢字の形を整える、板書を写す、考えを文章にするなど、「書く」にも複数の作業があります。口頭では答えられても、書く場面で止まることがあります。

「計算」が難しいと、前の学年の内容が中学校で影響する

位取りや数の大きさ、繰り上がり、計算手順などにつまずきがあると、正負の数や方程式にも影響することがあります。ただし、計算の苦手さがすべて学習障害によるものとは限りません。

大切なのは「LDだからこの勉強法」と決めることではなく、実際につまずいている作業を具体的に見つけることです。


文字を読むのが苦手な中学生の勉強法

読むことがつらい場合は、読む量をひたすら増やす前に、文字を読む負担を調整して「教科の内容を理解できる形」を探しましょう。

1.一度に読む範囲を短くする

教科書を1ページまとめて読ませるのではなく、まず2〜3文や1段落から始めます。どの行を読んでいるか見失いやすいなら、指や紙のガイドを使って今の行を示す方法もあります。

「難しい漢字が読めない」「行を飛ばす」「文章は読めるが意味がつかめない」では必要な工夫が違います。どの場面で止まったかを確認しましょう。

2.読み上げと本人の説明を組み合わせる

家庭学習では、大人が問題文を読み上げたり、読み上げ機能を使ったりして内容を確認する方法があります。読んでもらった後に「この問題は何を聞いている?」と本人の言葉で説明してもらいましょう。

例えば社会の教科書を短く読み上げて、「いつの出来事?」「誰が何をした?」と二つだけ質問します。答えられたら、教科内容の理解につながっているかを確かめられます。

ただし、読み上げは読む力そのものの支援に代わる万能な方法ではありません。文字を読む練習が必要な部分と、他教科の内容理解を優先する部分を、学校や支援者と一緒に分けて考えます。

3.文章の重要な言葉と関係を目に見える形にする

読解では、長文を最初から何度も読み直すより、重要な言葉に印を付けたり、段落ごとの関係を図にしたりする工夫が考えられます。

発達障害教育推進センターも、文字や文章のどの段階で困っているかを把握し、重要箇所に印を付けたり、文章の関係を図示したりする支援を紹介しています。

参考:発達障害教育推進センター「文字や文章を読み理解する能力を高めるための指導・支援」


書くのが苦手な中学生の勉強法|ノート・漢字・記述問題

書く作業が難しい場合は、手書きの回数を増やすだけでなく、「理解する」「考えを組み立てる」「文字にする」を分けて支えましょう。

漢字は「形を見分ける」と「書く」を小さく練習する

例えば漢字を覚えるときは、最初に読み方と意味を確認し、次に「へん」「つくり」などの部分に分けて形を見ます。必要なら大きめのマスや手本を使い、少数の文字で練習します。

何度も書かせても、どこで間違えるのかがわからなければ負担が増えるだけになることがあります。「形を思い出せない」「細かい部分が違う」「書く位置がずれる」など、誤り方を確認しましょう。

あすなろの既存記事「学習障害の子でもカンタンにできる!漢字の覚え方」でも、漢字の書き取りに関する工夫が紹介されています。

作文・記述は「口頭→メモ→短い文」の順にする

いきなり原稿用紙を前にしても書けない場合、まず「何を伝えたい?」と話してもらい、キーワードを二つか三つ書き出します。その後、一文ずつ文章にします。

例えば理科の記述問題なら、「何が起きた?」「なぜそうなった?」を口頭で整理してから、「〇〇だから、△△になる」と短い文にします。説明を聞いた内容が合っているかを先に確認できるため、書くことと理解不足を区別しやすくなります。

板書は全部写すより、学ぶ目的を優先する

黒板を写している間に説明を聞き逃す子には、授業資料の配布、ワークシートの使用、書く量の調整などを学校へ相談する方法があります。家庭では、ノートがきれいかどうかだけでなく、授業の重要な内容を理解できているかを確かめましょう。

国立特別支援教育総合研究所は、書きに困難がある場合に、用具やマス目の工夫、書く負担を減らすワークシートなどの支援例を紹介しています。

参考:発達障害教育推進センター「書くことが苦手なのですが・・・」


計算が苦手な中学生の数学は、どこまで戻ればいい?

数学が難しいときは、いきなり中学校の問題を何度も解く前に、「数の意味」「計算の手順」「数字を書く位置」のどこでつまずいているかを確かめます。

最初に、数字の意味と計算手順を別々に確認する

例えば「27+18」を考えてみましょう。

「20と10、7と8をそれぞれ合わせる」と説明できるか、筆算で一の位と十の位をそろえられるか、繰り上がった1をどこへ書くかを確認します。答えは45です。

数の合成は理解しているのに数字をずらして書いてしまうなら、大きいマス目のノートや桁の枠が助けになる場合があります。一方、数のまとまり自体がわからないときは、硬貨の模型や数直線など具体物を用いて考える方法があります。

中学校の問題は、必要な前提だけ戻って確かめる

例えば「3x+2=11」という一次方程式なら、まず「11−2=9」、次に「3つ分で9だから1つ分は3」と考えられるかを確認します。x=3です。

式の意味が理解できない場合は、逆算や文字式に戻ります。分数の計算で止まる場合は、小学校の分数の意味や通分などに戻ることもあります。学年を丸ごとやり直すのではなく、必要なところを絞りましょう。

反復の前に「同じ間違いになる理由」を確かめる

同じ筆算を20問解いても、毎回同じ位置で数字がずれるなら、問題数より用紙の工夫が優先かもしれません。発達障害教育推進センターでも、計算のつまずき方を調べたうえで、問題量の調整、マス目の活用、繰り上がりの数字を書く場所の明示などを紹介しています。

参考:発達障害教育推進センター「計算が苦手なのですが・・・」


英語・理科・社会も「読む・書く負担」を分けると取り組みやすい

学習障害のある中学生にとって、苦手さは国語や数学だけに表れるとは限りません。ほかの教科でも、学びたい内容と作業の負担を分けて考えてみましょう。

英語:聞く・意味を理解する・読む・つづるを分ける

英単語の意味はわかるのに、つづりを正しく書けない子もいます。まず「聞いて意味がわかるか」「単語を見て読めるか」「書けるか」を別々に確認します。

例えば「I like music.」という短い文なら、音声を聞いて意味を確かめ、主語・動詞・目的語を順に指し示し、必要に応じて書く練習に進みます。

書くことが特に難しい場合は、答えを指さす、単語カードを並べる、入力するなどで意味や語順を確認する工夫もあります。書く力を育てる支援が必要な部分は、別途学校と相談しましょう。

理科:実験・図・用語を使い、説明文だけに頼らない

教科書の文章を読むのが負担でも、図や実験の流れを見れば理解しやすい場合があります。例えば電気回路なら、回路図のどの部分を説明しているのかを示しながら、用語を一つずつ確認します。

計算単元では「式を立てる」「計算する」「答えに単位を書く」を分け、どの作業が難しいか確認します。計算機器の使用や評価方法は、学校の授業・テストの方針に従ってください。

社会:長い文章を短い問いにし、時系列や地図と結びつける

歴史なら、教科書の一段落を読み上げ、「いつ」「誰が」「何をした」の三つを確認します。その後、出来事を順番に並べたり、地図や年表と結びつけたりします。

答えを文字で書けない場合でも、まず選択肢や口頭で内容を理解できているかを確かめましょう。最後に学校で求められる解答方法へどうつなぐかを考えます。

「書けないから知らない」「読めないから理解できない」と一度で判断せず、別の方法で確認することがポイントです。


家庭学習は「理解する10分」と「必要な技能を練習する時間」を分ける

学習時間を一律に決める必要はありません。ここでは、疲れやすく、取りかかるのに負担がある中学生を想定した短い学習例を紹介します。

例えば最初の10分を次のように使います。

  1. 2分:今日は何を理解するのか、教科書の見出しや例題で確認する。
  2. 3分:本人が使いやすい方法(読み上げ・図・口頭説明など)で内容を確かめる。
  3. 3分:同じ型の問題を一つ試し、必要ならヒントを使う。
  4. 2分:「わかったこと」と「まだ難しいこと」を一つずつ記録する。

その後、漢字を書く、計算する、英文をつづるなど、習得したい技能の練習を本人の負担に合わせて追加します。逆に疲労が強い日は休息を優先して構いません。

これは時間配分の想定例であり、すべての子に適した標準時間ではありません。内容を理解するための時間と、苦手な作業を身につける練習の時間を混同しないことが大切です。

最初の1週間は、毎日違う教材を増やさない

最初の7日間は、次のような進め方も考えられます。

  • 1日目:学校ワークの短い問題で、読む・話す・書く・計算する違いを確認する。
  • 2日目:負担が大きかった作業について、読み上げ・枠付き用紙など工夫を一つ試す。
  • 3日目:2日目と同じ学習内容を、同じ方法で確認する。
  • 4日目:必要な漢字や計算など、技能の練習を少量だけ加える。
  • 5日目:学校で今習っている内容に、工夫した方法を使ってみる。
  • 6日目:できた問題と難しかった問題を分け、学校へ聞きたいことを整理する。
  • 7日目:本人と「何が楽になったか」を振り返り、次週に続ける方法を一つ決める。

毎日この通りに進める必要はありません。どの方法が本人に合ったかを確かめるための例です。うまくいかなかったら、本人を責めるのではなく教材や方法を調整しましょう。


宿題や定期テストでは、家庭だけで抱えず学校と連携する

家庭では口頭で答えられても、学校では書く量が多すぎて終わらないことがあります。必要な学びを確保するためには、家庭での工夫と学校の対応をつなぐことが大切です。

学校には「診断名」より先に具体的な困りごとを伝える

例えば、次のような情報を整理すると相談しやすくなります。

  • 「問題文を読み上げると、内容を説明できることがあります」
  • 「口頭では答えられますが、記述にすると大幅に時間がかかります」
  • 「計算の考え方は説明できますが、筆算の位がずれやすいです」
  • 「板書を写すことに集中すると、先生の説明を聞き逃します」

相談の対象として、資料の読みやすさ、読み上げ、書く量・方法、教材の提示方法、定期テストでの配慮などが考えられます。ただし、具体的にどの支援が実施されるかは、本人の状況と学校との話し合いによって異なります。

国立特別支援教育総合研究所は、LDのある子どもへの合理的配慮の例として、教材の提示方法、読み上げ、コンピュータの利用、学習内容の調整などを紹介しています。

参考:発達障害教育推進センター「学習障害(LD)のある子どもの合理的配慮」

先生への相談文例

以下は想定例です。お子さんの実際の状況に合わせて書き換えてください。

「いつもお世話になっております。学習についてご相談です。家庭では、教科書の文章を読み上げると内容を説明できることがありますが、自分で長い文章を読むと時間がかかり、問題に取り組みきれないことがあります。現在、文章を区切って確認する方法を試しています。授業で使う資料の提示方法や、学校で取り組める工夫について、本人を交えてご相談できますでしょうか。」

テストでの配慮が必要そうな場合は、直前ではなく余裕をもって相談しましょう。「診断があれば必ず時間が延長される」といった一律の扱いではありません。


「読み書きが苦手=学習障害」と自己判断しないで

読み書きや計算の苦手さには、学習内容の未習得、視力・聴力などの問題、心身の状態、学習環境など、さまざまな背景があります。この記事で紹介した様子だけで学習障害かどうかを判断することはできません。

特定の学習領域で強い困難が続き、本人がつらそうにしているときは、担任や特別支援教育コーディネーター、スクールカウンセラーなどに相談してみてください。必要に応じて医療機関や地域の相談機関につながる方法もあります。

診断を待たなければ家庭や学校で工夫を試せない、ということではありません。本人が困っている場面を記録し、使いやすかった方法を学校と共有することから始められます。

また、勉強への強い拒否、睡眠や食欲の変化、不安の高まりなどが見られる場合は、勉強量を増やす前に心身の状態を優先して相談しましょう。


よくある質問

Q.学習障害のある中学生は、漢字を何回も書けば覚えられますか?

練習回数を増やすだけでは、負担が大きくなる場合があります。読み方や意味がわかるか、字のどこを間違えるかを確認し、部分に分ける、大きなマスを使うなどの工夫を試しましょう。必要な練習量や方法は個人差があります。

Q.読み上げやパソコンを使うと、本人の勉強にならないのでは?

何を学ぶ課題かによって判断が変わります。理科の内容理解を確かめるなら、読み上げで読む負担を減らすことが役立つ場合があります。一方、文字を読む力そのものを伸ばす学習は別に考える必要があります。学校の課題やテストで使う際は相談してください。

Q.中3で受験が近い場合、どの教科から勉強すればよいですか?

受験までの期間、志望校、現在の理解度によって優先順位は変わります。学校の先生と試験内容や必要な学習範囲を確認し、本人が使いやすい方法で基礎問題に取り組みましょう。高校入試の配慮は地域や年度により手続きが異なるため、早めに学校・教育委員会へ確認してください。

Q.診断を受けていなくても学校に相談できますか?

はい。実際にどの場面で困っているかを学校に伝え、学習方法や支援について相談できます。具体的な配慮は個別に検討されるもので、希望した方法が必ず実施されるわけではありません。


まとめ|学習障害のある中学生は「できる方法」から学びをつなげよう

学習障害のある中学生の勉強法では、すべての教科を同じ方法で勉強しなくても構いません。

  • 読む・書く・計算するうち、どの作業が負担なのか確認する。
  • 口頭説明や図、読み上げなどで、まず教科の内容を理解できるか確かめる。
  • 漢字や計算などの技能は、つまずく部分を見つけて少量ずつ練習する。
  • 学校ワークやテストでの困りごとは、学校と具体的に相談する。
  • できたかどうかだけでなく、本人が取り組みやすかった方法も振り返る。

今日の最初の一歩は、学校の問題を一つ選び、「読んで答える」「聞いて答える」「書いて答える」のどこで違いが出るかを、無理のない範囲で確かめることです。

できることを手がかりに、学習内容と必要な技能を少しずつつないでいきましょう。


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この記事の著者

房前 みなみ / 家庭教師のあすなろ 発達障害コミュニケーション指導者

体を動かすのが大好き、誰とでも仲良くなれるタイプです。学生時代は陸上部に所属し、負けるのが大嫌い。とにかく強くなりたくて部活が終わった後も自主練!「勉強よりも部活!!」というタイプでした。なので、勉強にはかなり苦労しました…。でも、母が頼んでくれた家庭教師の先生のおかげで、成績を上げることができました。今度は私も同じように勉強で困っているお子さんのために「家庭教師のあすなろ」のスタッフとして、少しでも勉強を好きになってもらえるようなサポートを心がけています。

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