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WISC-4検査の結果、処理速度指標(PSI)が低い。そんな子への対応方法とは?
2020.08.26

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幼稚園や保育園から上がったばかりのお子さんの中には、小学校というシステムになかなか馴染めない子がいます。場合によっては、子どもが学校に行かなくなるなど不登校になってしまうケースがあります。
この原因の1つに、板書をノートにとるという、誰しもが行なう作業が考えられます。
これと深く関係してくるのが、WISC-4(ウィスク4)検査における、処理速度指標(PSI)というものです。
そこで、今回はWISC-4(ウィスク4)検査の指標の1つである処理速度指標(PSI)についてご説明いたします。処理速度指標(PSI)が低い時に、どのように考え、お子さんにどのように接していけばよいのかもわかります。ぜひ最後まで読んでくださいね。
処理速度指標(PSI)とは、どんな指標なのか
まずは、【WISC-4(ウィスク4)検査】について説明致します。【WISC-4(ウィスク4)検査】とは、WISC-IVはウェクスラー式知能検査の一つです。
WISC-4(ウィスク4)検査とは
ウィスク【WISC】:米国の心理臨床学者ウェクスラーが考案した児童知能検査法で、改良を重ねて現在アメリカでは最新版が『WISC-V』。日本で実施されているのは『WISC-IV(ウィスク4)』(2019年5月現在)となっています。
WISC-4(ウィスク4)では、全体的な認知能力を表す全検査IQと「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリー」「処理速度」の4つの指標をそれぞれ数値化した結果が見られるます。
4つの指標とは
言語理解指標(VCI) | 言語による理解力・推理力・思考力に関する指標 |
知覚推理指標(PRI) | 視覚的な情報を把握し推理する力や、視覚的情報にあわせて体を動かす力に関する指標 |
ワーキングメモリー指標(WMI) | 一時的に情報を記憶しながら処理する能力に関する指標 |
処理速度指標(PSI) | 視覚情報を処理するスピードに関する指標 |
WISC-4(ウィスク4)検査における処理速度指標(PSI)とは、ザックリ言うと
「視覚で捉えた短期的な情報を二次元的に処理する力」
を指します。
さらに詳しく述べると
- 同時処理
- 視覚的短期記憶
- 描写処理
- 選択的注意
- 集中力
などです。
ワーキングメモリ指標(WMI)の記事では、短期記憶=ワーキングメモリ指標(WMI)とお伝えしましたが、正確には
- 聴覚的短期記憶=ワーキングメモリ指標(WMI)
- 視覚的短期記憶=処理速度指標(PSI)
なのです。
つまり、処理速度指標(PSI)が低いと
- 視覚情報の認識が苦手
- 視覚情報の記憶が苦手
- 同時処理が苦手
- 描写処理が苦手
- 集中力がすぐに切れる
ということが往々にして起こり得るのです。
このように処理速度指標が低い子どもにはさまざまな困難があるのですが、まずは板書をノートにとることに焦点を当ててみます。
板書をノートにとる際に必要な行動を1つ1つの細かい行動に要素分解すると
- 書き写すところを見つける
- 書き写す内容を理解する
- 書き写す内容を記憶する
- 書き写す内容をノートにトレースする
と言えるでしょう。
たくさんある文章の中で書く場所を探すという行為は「選択的注意」と呼びます。この「選択的注意」が低い子どもは、探し物が見つからなかったりします。学校や塾からプリントをもらったとしてもバックから見つけることが困難なのです。
また、板書をとる際に理解しているかどうかは関係ない、という方がいますが、板書をとる際に書き写す内容は、それが知っている内容かどうかが書き写すスピードに大きな影響を与えているのです。
例えば…、
読んだことがないアラビア語の文章と慣れ親しんだ日本語の文章では、どちらが書き写すのが早いでしょうか。
意味のないカタカナだけで書かれた暗号と普通の文章では、どちらが書き写すのが早いでしょうか。
内容を理解している文章の方が書き写すスピードは圧倒的に早いですよね。内容が分からないと1単語ずつ、または1文字ずつノートに書こうとするのです。
具体例を挙げてみると、「ポジティブ」ということばをノートに書き写すとしましょう。
ポジティブということばを知っていて、さらに視覚記憶が強い子どもであれば、迷わずノートに書き写します
しかし、ポジティブということばが分からない視覚記憶が中くらいの子は
ポジを見て、ノートに書いてから
ティブを見て、ノートに書きます。
ポジティブを2ワードに切り分けると当然ですが、一度に覚えてノートに書いた子の倍の時間が必要です。
視覚記憶がかなり低い子は
ポを見て覚えて、ノートに書いて
ジを見て覚えて、ノートに書いて
テを見て覚えて、ノートに書いて
…
をずっと繰り返すのです。
では、処理速度指標(PSI)が低い子には、どんな対応をしたらいいのか
では、実際に処理速度指標(PSI)が低い子にはどのような対応をすればいいのでしょうか。
- 板書をノートにとる時間を十分に与える
- 板書をノートにとる量を減らす
- 視覚からの情報はシンプルにする
- 内容を理解させてからノートをとらせる
- 分かりやすいことば(単語)を板書
- ノートをとる際、聴覚刺激は与えない
そもそも、ノートを取りながら、先生の話を同時に聞くというかなり難易度の高いことが一般の授業で行われているのです。しかも、学校の先生は大人数の生徒を同時に見ていかなければならず、授業のカリキュラムも決まっているので、一人の生徒のためにゆっくり進行するわけにもいかず、上記の内容を学校で実行するのは少し難しいかもしれません。
ですが、おうちで少しずつ慣れさせていったり、視覚情報の処理や記憶などのトレーニングをすることで十分改善する場合もあります。
処理速度指標(PSI)を鍛えるトレーニングについて詳しく知りたい方は、発達心理サポートセンターまでお問い合わせください。
WISC4の検査結果から効果的な勉強方法や弱い指標のトレーニング方法などもお伝えしています。
「WISC-4(ウィスク4)についてもっと詳しく知りたい!」という方は、発達心理サポートセンターHP(https://www.wisc4.info)でもご紹介しています。ぜひ、ご覧ください。
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