勉強法

発達障害のある中学生が勉強しないのはなぜ?理由の見分け方と親の対応

この記事の著者

房前 みなみ / 家庭教師のあすなろ 発達障害コミュニケーション指導者

「何度言っても、うちの子は勉強しない」

「テストが近いのにゲームばかり。将来が心配……」

中学生になると教科も提出物も増え、保護者の方の焦りも大きくなりますよね。

発達障害のある中学生が勉強しないときは、まず「やる気がない」と決めつけず、始め方がわからないのか、内容が難しいのか、疲れているのか、失敗が怖いのかを確かめることが大切です。

必要な対応は理由によって異なります。声かけを増やす前に、勉強を妨げているものを一つ減らすところから始めましょう。

この記事では、家庭でできる原因の見分け方、勉強に向かうまでの5つの手順、1週間の立て直し例、学校への相談方法を紹介します。発達障害の診断がないお子さんにも役立つ工夫があります。


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もくじ

「勉強しない」は4つの場面に分けると対応が見えてくる

同じ「勉強しない」に見えても、止まっている場所は違います。まず次のどれに近いか、保護者の方が見た事実を整理してみてください。

  • 始められない:机には来るけれど教材を開けない。何から手をつけるかわからない。
  • 始めても続かない:1問やると席を立つ。途中で別のことが気になり、戻れない。
  • 特定の教科だけ避ける:英語や国語のプリントになると止まる。読む・書く・計算する負担が大きい。
  • 帰宅後は何もできない:学校では頑張っているが、家では疲れ切っている。勉強の話をすると強く拒む。

ここで大切なのは、診断名から理由を決めないことです。ADHD(注意欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)、学習障害・限局性学習症(SLD)などの特性が関係する場合もありますが、同じ診断名でも困りごとは一人ひとり異なります。

また、勉強しない理由が発達特性だけとは限りません。難しい授業、友人関係、睡眠不足、心身の不調、思春期ならではの気持ちなどが重なることもあります。


発達障害のある中学生が勉強を避ける5つの理由

原因を一つに断定する必要はありません。「うちの子にもありそう」と感じた項目から、無理なく確認していきましょう。

1.やることが多く、最初の一歩を決められない

「数学のワークをやって、英語も復習して、明日の準備をしてね」。大人にとっては普通の声かけでも、何を先にするか決める負担が大きい子には難しいことがあります。

たとえば、ワークを開くこと、必要なページを探すこと、問題を選ぶことがそれぞれ別の作業です。「勉強する」という一言だけでは、動き出せない場合があります。

この場合は「数学のワークを机に出そう」「12ページの1番だけ見よう」と、最初の行動を小さくします。

2.授業がわからず、取り組んでも解けない

机に向かっても、何問も続けて解けなければ、次に取りかかるのがつらくなるかもしれません。

たとえば中2の一次関数が難しい場合、比例・反比例や座標の理解が抜けていることがあります。現在のページを繰り返すだけでなく、必要な前提に戻ることが重要です。

「この問題をやりなさい」と押す前に、例題を一緒に見て「どこまでならわかる?」と確かめてみましょう。

3.間違える経験が重なり、勉強が怖くなっている

「また間違えた」「こんなこともできないの」と言われた経験が重なると、正解できる自信が持てず、勉強そのものを避けたくなる場合があります。

「やればできるはず」と励ますだけでは、本人の感じている難しさが解消しないことも。最初は正解率を競うより、本人が「これならやれそう」と思える課題を選びましょう。

4.学校で力を使い、帰宅後には余裕がない

授業の切り替え、教室の音、人とのやり取りなどが負担となり、帰宅後に疲れ切っている子もいます。

「学校ではできているのに家では何もしない」という場合、家で怠けているとは限りません。休息のあとなら動けるのか、静かな場所なら取り組めるのか、時間帯を変えて確認してみてください。

5.「勉強しなさい」のやり取り自体がつらい

中学生は自分の考えやペースを大切にしたい時期でもあります。毎日勉強を巡って言い合いになると、内容が難しいこととは別に、声をかけられるだけで拒否したくなる場合があります。

親子の関係を守るためにも、話し合いはお互いが落ち着いている時間に。「今すぐやるかどうか」だけを争わず、困っていることを聞く時間を作ります。

国立特別支援教育総合研究所の発達障害教育推進センターでは、課題をやり遂げられない場合、指示を理解できているか、取り組み方がわかるか、集中の持続が難しいかなど、要因を分けて把握することを勧めています。

参考:発達障害教育推進センター「指示に従って、課題や活動をやり遂げるための指導・支援」


まず3日間、「勉強しない理由」を親子で確かめよう

いきなり新しい勉強計画を作るより、まず3日ほど「いつ・何が・どこまでできたか」を短く記録すると、工夫する場所を見つけやすくなります。これは診断テストではなく、家庭での観察メモです。

1日目:勉強を始める前の様子を見る

勉強する時間が来たとき、次のような点を記録します。

  • 帰宅からどれくらい時間がたっているか
  • 眠い、空腹、頭が痛いなど体調の訴えはないか
  • 「何をするか」は本人にわかっているか
  • 教科書やワークを自分で準備できるか

「やる気なし」と書くのではなく、「19時、数学ワークを出せずに10分たった」など、見たままを記録します。嫌がっている日は無理に試さず、話せるときに確認しましょう。

2日目:負担を一つだけ変えてみる

例えば「食後30分休んでから」「最初の問題を保護者と選んでから」「教科書を開くだけ」のように、条件を一つ変えます。

一度に勉強時間・場所・教材・声かけを全部変えると、何が合っていたかがわかりにくくなります。まずは一つだけ試しましょう。

3日目:本人に「どこがいちばん嫌だった?」と聞く

「何で勉強しないの?」は、本人も答えにくい質問です。「始める前がつらい?」「問題を見てから難しい?」「学校から帰ったら疲れてる?」と選択肢を示すと話しやすいことがあります。

本人の答えと保護者の観察が違うこともあります。そのときは否定せず、両方を手がかりにしてください。無理に理由を言わせる必要はありません。

この3日間の目標は、勉強時間を増やすことではなく、最初に変えるべき負担を一つ見つけることです。


勉強しない中学生への親の対応|始められる形にする5つの手順

理由の見当がついたら、声かけと課題の出し方を調整します。本人の意思を無視して従わせる方法ではなく、一緒に決められる範囲を残すことが大切です。

STEP1.話し合いは言い合いになっていないときにする

学校から帰った直後やゲームの途中に「今すぐ勉強」と言うと、勉強そのものより、切り替えの難しさでぶつかる場合があります。

落ち着いた時間に「最近、勉強の話で嫌な気持ちにさせているかもしれないね。何がいちばん大変?」と尋ねてみてください。

STEP2.勉強の「開始条件」を本人と一緒に決める

「毎日19時になったら」だけで難しければ、「夕食後に10分休む→机に座る」「お風呂の前に英単語を確認する」など、生活の流れと結びつけます。

ただし、開始時刻を決めること自体が強いストレスになる場合は、時間帯を選べるようにします。「帰宅後に休んでから」など、柔軟な約束でも構いません。

STEP3.最初の目標は「1問」「1行」「開く」から選ぶ

たとえば数学のワークが残っていても、いきなり2ページを目標にしません。

  1. ワークを机に置く。
  2. 今日のページを開く。
  3. 例題の解き方を一緒に確認する。
  4. 同じ型の問題を1問試す。
  5. 途中でわからなくなった場所に印を付ける。

この中の「ページを開く」まででも、今まで始められなかった子にとっては前進です。一方で、学習内容に余裕がある子には簡単すぎることもあります。本人に合わせて調整してください。

STEP4.終わり方も先に決める

「できるまで終わらない」では、取りかかる前から負担を感じる子もいます。「1問試したら今日は終わり」「わからなければ印を付けて相談する」と、終了条件も明確にしましょう。

短時間で終えるのは、勉強を放棄するためではありません。最初の段階では「始められる」「困ったら助けを求められる」という経験をつくることを目的にします。

STEP5.翌日は量より「取り組めた条件」を振り返る

終わったら「何分できた?」だけではなく、「昨日より始めやすかった?」「隣に人がいる方がよかった?」と聞きます。

本人が「休んでからならできた」と答えたら、次の日も同じ条件を使ってみましょう。続かなければ、努力不足とせず、計画の方を修正します。


「勉強しない」を変える1週間の小さな計画例

以下は、学校から帰っても家庭学習に取りかかれない中学生を想定した例です。学習時間の標準や、効果が保証された方法ではありません。疲労が強い日には休息を優先し、学校の課題量なども考えて調整してください。

  • 月曜:本人と「何が大変か」を話し、教材を1冊だけ決める。勉強を無理に始めさせなくてもよい。
  • 火曜:決めた教材を開き、やれそうな問題を一つ選ぶ。ここで終わっても記録する。
  • 水曜:例題を一緒に見て、同じ型の問題を1問試す。難しければ前の単元へ戻る。
  • 木曜:火曜・水曜と同じ時間帯で始めてみる。うまくいかなければ時間帯を変える。
  • 金曜:本人が選んだ教科で、短い課題に取り組む。わからない問題は印を付けておく。
  • 土曜:学校の提出物を一緒に確認。残りの量と締め切りを紙に書き出す。
  • 日曜:学習は休みにするか、本人と相談。始めやすかった工夫を一つだけ次週へ残す。

「5分できたら次は10分、次は20分」と必ず増やす必要はありません。短い時間が続けられたら、それを維持する選択もあります。

もし1問も難しい場合は、教材を選ぶ・机に置く・説明を聞くなど、本人が同意できる活動まで目標を下げてください。強い拒否が続くときは、この計画を無理に進めず、学校や支援者に相談しましょう。


困りごと別に、勉強への入り口を変える方法

「短い時間なら誰でも勉強できる」とは限りません。困りごとに応じて、最初の一歩を変えることが必要です。

注意がそれて途中で止まるとき

今使う教材以外を机から離し、「ここまでやったら休憩」と見える形にします。タイマーが安心につながるなら使いますが、音や時間制限が苦手なら無理に使いません。

国立特別支援教育総合研究所では、注意を持続しづらい場合、時間や教科による違いを把握し、課題を段階に分けることや、学習環境を整えることを挙げています。

参考:発達障害教育推進センター「注意を集中し続けるための指導・支援」

予定や見通しが変わると強く嫌がるとき

今日やることと、終わりの目安を紙に書きます。「英語を先にやる?それとも数学から?」と本人が選べる部分を作りましょう。

予定の変更が必要になったら、できるだけ早く伝えます。突然の変更を避けられない場合は、変更後の見通しを短く説明します。

読む・書く作業そのものが難しいとき

「問題の意味はわかるのに書くのに時間がかかる」なら、まず口頭で答えてもらい、理解している内容を確認します。読み上げやICT機器の利用が役立つこともあります。

書く練習そのものが必要な場面と、数学など別の力を確認したい場面を分けて考えましょう。学校の課題・テストでの対応は先生と相談してください。

ゲームやスマホをやめられないとき

いきなり取り上げると、勉強の問題が親子の対立に変わってしまうことがあります。まず、何をしている時間が楽しいのか、切り替えのどこが難しいかを聞いてみましょう。

例えば「19時に終える」だけでなく、「次の対戦が終わったら」「終了5分前に声をかける」のように、切り替えを予告する方法があります。ただし、ゲームを終える約束が難しい場合には、本人と話し合い、開始時間や遊ぶ場所などのルールも見直します。

スマホやゲームが勉強しない唯一の原因だと決めつけないことが大切です。学習内容の難しさや疲れも同時に確認しましょう。


「勉強しなさい」の代わりに使いたい声かけ

親御さんにとって、つい出てしまう言葉もありますよね。毎日気をつけるのは簡単ではありません。まずは言い方を一つだけ変えるところからで大丈夫です。

  • 「いつになったら勉強するの?」→「今は疲れている?夕食後とお風呂の前、どちらがよさそう?」
  • 「何度言えばわかるの?」→「最初の一歩が難しそうだね。教材を出すところは一緒にやろうか」
  • 「その点数じゃ高校に行けないよ」→「次のテストで困らないように、わからないところを一つ探そう」
  • 「こんな簡単な問題もできないの?」→「どこまではわかった?前の例題を見てもいいよ」

本人が話したくないときは、無理に返事を求めないでください。「困ったら教えてね」と伝え、時間を置く方がよい場合もあります。

大切なのは、ほめるために大げさな言葉を使うことより、できた行動を具体的に見つけることです。「自分で問題を選べたね」「わからないところを教えてくれたね」と、事実に沿って伝えましょう。


中学校の宿題や提出物が終わらない場合は、学校とも相談する

家庭学習が進まないと、学校の提出物がたまり、さらに勉強を避けるという悪循環になることがあります。保護者だけで抱え込まず、担任や教科担当、特別支援教育コーディネーターに相談しましょう。

相談するときは、「勉強をしません」だけでなく、具体的な場面を伝えると話し合いやすくなります。

  • 「提出期限は覚えているのに、何から始めればよいかわからず止まります」
  • 「問題は口頭で答えられますが、書く作業で時間がかかります」
  • 「帰宅後は疲れが強く、提出課題に取り組む余力がありません」
  • 「一度に複数の指示があると、最初の課題を選べません」

学校との話し合いでは、課題の優先順位、指示の示し方、教材の使い方、必要な合理的配慮などを相談できる場合があります。どの対応が可能かは、本人の教育的ニーズや学校との協議によって異なります。

文部科学省は、合理的配慮について本人・保護者と学校側が対話し、個々の状況に応じて検討することを示しています。

参考:文部科学省「障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」

なお、宿題だけに絞った対応を詳しく知りたい方には、「宿題しないのはなぜ?発達障害の子に“合った”やり方を見つけよう」でも家庭での工夫を紹介しています。


無理に勉強を進めるより、相談を優先したいサイン

「勉強しない」という状態の背景に、強いストレスや体調の問題がある場合もあります。次のような変化が続くときは、勉強量を増やすことより、本人の状態を確かめることを優先してください。

  • 勉強の話だけでなく、学校や日常生活全体への意欲が大きく落ちている
  • 眠れない、食欲が大きく変わった、頭痛や腹痛が続いている
  • 不安が強い、学校に行くことがつらい、親子の衝突が激しくなっている
  • これまでできていたことが急に難しくなった

まずは本人の話を聞き、担任やスクールカウンセラー、かかりつけ医などに相談してください。心身の不調が強い場合には、医療機関の受診も検討しましょう。

「勉強しない=発達障害の症状」と決めつけることも、「勉強しない=怠け」と片づけることも避けたいところです。学び方を変えるだけでは解決しないこともあります。


よくある質問

Q.発達障害と反抗期、どちらが原因なのでしょうか?

外から見える行動だけで、どちらか一方に決めることはできません。学習内容の難しさ、疲労、本人の気持ち、親子のやり取りが重なっている場合もあります。どの場面で困るのかを確認し、必要に応じて学校や専門機関に相談してください。

Q.中3で受験が近いのに、まったく勉強しない場合は?

受験が近くても、いきなり長時間の勉強を求めると負担が大きくなることがあります。まず現在の理解度と受験までに必要なことを学校の先生と整理し、取り組む教科や単元の優先順位を決めましょう。進路の選択肢についても早めに相談することが大切です。

Q.親が勉強を見ようとするとケンカになります。どうすればいいですか?

保護者が教える役と見守る役を両方担う必要はありません。家庭では教材の準備や予定の確認に役割を絞り、内容の説明は学校の先生や外部の学習支援者に任せる方法もあります。親子で落ち着いて話せる関係を優先してください。

Q.発達障害の診断がない子にも、この方法を試せますか?

はい。「やることを具体的にする」「教材の量を調整する」「本人と開始条件を相談する」といった工夫は、診断の有無にかかわらず試せます。ただし、強い困りごとが続く場合は自己判断せず、学校や専門機関に相談しましょう。


まとめ|「勉強しない」を責める前に、できる条件を一つ探そう

発達障害のある中学生が勉強しないとき、必要なのは一律に厳しくすることでも、すべてを放っておくことでもありません。

「始められない」「続かない」「特定の作業が難しい」「疲れている」など、どの段階に負担があるのかを確かめ、その子に合う小さな一歩を作ることが出発点です。

まずは今日、勉強させる時間を増やす代わりに「何がいちばん大変?」と聞ける時間をつくってみてください。本人が答えられなければ、3日間の観察から始めても構いません。

家庭だけで難しいときは、学校や専門家の力を借りながら進めましょう。親子の関係とお子さんの安心感を守ることも、これからの学びを支える大切な土台です。


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「何から始めればいいか決められない」「学校の授業がわからず、勉強を避けている」「親が教えようとするとケンカになる」。そんなときは、家庭以外の人と一緒に学習の進め方を考える方法もあります。

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この記事の著者

房前 みなみ / 家庭教師のあすなろ 発達障害コミュニケーション指導者

体を動かすのが大好き、誰とでも仲良くなれるタイプです。学生時代は陸上部に所属し、負けるのが大嫌い。とにかく強くなりたくて部活が終わった後も自主練!「勉強よりも部活!!」というタイプでした。なので、勉強にはかなり苦労しました…。でも、母が頼んでくれた家庭教師の先生のおかげで、成績を上げることができました。今度は私も同じように勉強で困っているお子さんのために「家庭教師のあすなろ」のスタッフとして、少しでも勉強を好きになってもらえるようなサポートを心がけています。

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