支援のコツ

WISC-Ⅴ「流動性推理」とは?FRIが低い時の困り事と支援策

この記事の著者

房前 みなみ / 家庭教師のあすなろ 発達障害コミュニケーション指導者

「急な予定変更やルールの変更が苦手」
「新しい場所や活動の前に、不安が強くなる」
「こだわりが強すぎて、うまくいかない時に他の方法へ切り替えられない」

こんなお子さんの様子に、心当たりはありませんか?
もしかすると、それはWISC-Ⅴの指標のひとつである流動性推理(FRI)が関係しているかもしれません。
今回は、流動性推理(FRI)とはどんな力なのか、そしてFRIが低いときに起こりやすい困りごとや、周りができるサポートについて、わかりやすくお伝えしていきます。

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流動性推理(FRI)とは何か?

流動性推理(FRI:FluidReasoningIndex)とは、初めて向き合う課題や新しい状況に対して、目の前の情報を手がかりに、パターンやルールを見つけて解決方法を考える力のことです。
たとえば、パズルの中から法則性を見抜いたり、見慣れない問題でも「こうかな?」と推測しながら答えに近づいたりする力のことです。この力は、子どもの学習だけでなく、生活の中でもとても大切な認知機能のひとつです。

この流動性推理は、知能検査WISC-Ⅴにおいて「抽象的に考える力」「論理的に筋道立てて考える力」「関連性を見つける力」を測るための指標として使われています。

以前のWISC-IVでは「知覚推理(PRI)」の中にまとめて評価されていましたが、それだけでは「目で見た情報の理解が苦手なのか」「情報をもとに考えることが苦手なのか」がわかりづらいという課題がありました。
そこでWISC-Ⅴでは、知覚推理(PRI)を視空間(VSI)流動性推理(FRI)に分けて評価することで、子どもの得意と苦手をより正確に理解できるようになったんです。

どうやって流動性推理(FRI)を調べるのか

流動性推理指標(FRI)を測るために、WISC-Vでは主に「行列推理」と「バランス」という2つの課題を用います。

行列推理

いくつかの図形や模様が並んでおり、その中にある「共通するルール」を見つけ、抜けている部分に当てはまる図形を選ぶ問題です。例えば「形が少しずつ変わっている」「色が決まった順番で増えている」といった法則を読み取ります。
この課題では、見たものをもとにパターンを見抜く力や、抽象的に考える力が使われます。

バランス

天秤のイラストを見て「どの図形をのせたら釣り合うか?」を推測します。形の大きさや置かれている位置から見えない「重さ」の関係を考えます。
この課題では、数や量の感覚、論理的な思考、目で見た情報を整理する力が必要となります。

どちらの課題も「ただ暗記していればできる」ものではなく、その場で手がかりを集めながら考える力が求められます。

「流動性推理が低い」とは、どういうことか?

新しい問題に直面した時に、柔軟に考えたりパターンを見つけたりするのが少し難しい傾向がある、
ということです。

具体的には、

  • 初めての問題に取りかかったとき、どう考えれば良いのか戸惑いやすい
  • 解き方がすぐに思い浮かばず、解答までに時間がかかることが多い
  • 一度「このやり方」と決めた方法にこだわり、うまくいかなくても別の方法へ切り替えづらい

といった様子が見られます。

また、目に見えないルールや関係性を読み取ることが難しいため、与えられた情報を整理して推論することに負担を感じる場面が増えます。

その結果、

  • 算数の文章題で、いつもと違う解き方が必要なときにつまずいてしまう
  • 行き詰まった際に「他の方法を試す」という考えになりにくい

といった状況が起こりやすくなります。

ただし、ここで大事なのは、
これは性格でも努力不足でもなく「認知の特徴」
ということです。
お子さんは「できない」わけではなく「どう考えたらいいかが、つかみにくいだけ」なんです。

「流動性推理が低い」と、何に影響するの?

学習面への影響

流動性推理が低いお子さんは、学校の学習の中でつまずきやすい場面が出てくることがあります。

特に数学や理科など、新しい考え方や抽象的な内容を理解する必要のある教科では、理解までに時間がかかったり、なかなかピンとこないことがあります。

例えば、習った公式を別の場面に応用したり、複数のステップを踏んで解く問題に取り組む際に「どうやって進めたらいいんだろう?」「何を求めればいいのかわからない…」と、立ち止まりやすい傾向があります。そのため、

  • 文章題の中から、必要な情報を拾い集めるのが難しい
  • 問題に隠れている規則性や関係性に気づきにくい
  • 一度習ったやり方以外の方法を思いつきにくい

といったことが起こりやすくなります。

このような経験が重なると、「自分はできない」と感じやすくなり、自己肯定感が下がってしまうことがあるため、注意が必要です。

日常生活への影響

流動性推理の低さは、勉強だけでなく日常生活の中でも現れることがあります。

  • 予定が急に変わると混乱しやすい
  • 初めての場所や初めての体験に不安が強く出る
  • 一度決めた方法にこだわり、やり方を変えることがむずかしい

といった様子が見られることがあります。
「見通しを立てること」や「状況に合わせて柔軟に動くこと」が難しいため、いつもと違う状況になると「どうしたらいいのか」が分からなくなってしまうのです。

こうした経験が積み重なると「自分はできない」「やってもどうせうまくいかない」といった思いが強くなり、新しいことへ挑戦する意欲が落ちてしまうこともあります。
そのため、お子さんの気持ちに寄り添いながら、安心して試行錯誤できる環境を整えることがとても大切です。

ご家庭でもできる支援策

流動性推理そのものを「無理に伸ばそう」と頑張りすぎる必要はありません。

大切なのは、この特性を持つお子さんが『どんな場面で困りやすいのか』を理解することです。

そして、日常の中で「困りごと」を少しずつ減らしていく工夫を積み重ねることが、お子さんの安心や自信につながります。

苦手な分野だけに注目するのではなく、その子が持っている「好き」「得意」「こだわり」「強み」を活かしながらサポートすることも大切です。強みを軸にすれば、学びやチャレンジはうまく回りやすくなります。

では、ご家庭でどのようにサポートすればよいのかをお伝えします。

①ステップを踏んだ教え方

問題を解くときに、いきなり「自分で考えてみてね」と丸投げするのではなく、「どこから始めれば良いか」「どんな流れで考えれば良いか」を、あらかじめ一緒に確認しておきます。

例えば、算数の応用問題なら…

  • まず何を求める問題なのかを確認する
  • そのために使う数字・情報を見つける
  • どの公式(考え方)を使うか選ぶ
  • 実際に計算する

というように、手順をひとつずつ言葉で整理して伝えていきます。
焦らせず「ゆっくりでいいよ」と伝えることも大切です。順序立てて考える練習が積み重なると、お子さんは「考え方のコツ」を少しずつつかみやすくなります。

②具体物や視覚的サポートの活用

抽象的な内容を頭の中だけで処理するのは負担が大きいので、「見てわかる形」に置き換えてあげる工夫が効果的です。

  • ブロックやおはじきで数量関係を示す
  • 図・表・矢印を使って問題の流れを整理する
  • メモ用紙に「考えの途中」を書き出せるようにする

目で見て理解できる形にすると「何をどう考えればよいのか」がぐっとわかりやすくなり、お子さんの不安や混乱も軽減されやすくなります。

③パターン認識遊びやゲームで楽しく力を育てる

勉強だけでなく、遊びの中で自然に推理力を育むこともできます。

  • 交互・規則性を作って遊ぶ「色ビーズ並べ」
  • 図形や仲間わけカード遊び
  • パズル・迷路・論理パズルゲーム

ポイントは、最初は簡単なものから始め、できたらしっかり褒めること。成功体験が「考えることって楽しい」という気持ちにつながります。

④自由な発想を促す問いかけ

正解をひとつにしぼらず、お子さんの「自分の考え」を引き出す声かけが効果的です。
「あの雲、何に見える?」
「どうしてそう思ったの?」(興味を持って)
こうしたやりとりは、お子さんが自分の考えを言葉にし、頭の中を整理する力を育てます。

⑤失敗を責めず、試行錯誤を応援する

うまくいかなかった時に、
×「なんでできないの?」
ではなく、
〇「ここまで考えたんだね」「その工夫いいね」
過程を肯定する声かけがとても大切です。
「やってみたらいいんだ」「間違えても大丈夫なんだ」という安心感は、思考の柔軟さを育む土台になります。

⑥成功体験を積ませる

難しい問題ばかりだと、自信がすぐに折れてしまいます。
お子さんのペースに合わせ、課題の量・難易度・ヒントの出し方を調整してあげてください。
「できた」「わかった」という小さな成功の積み重ねが、自己効力感(自分はできるという感覚)を育て、次への意欲につながります。

流動性推理が低かった時の心構え

「低い=ダメ」という意味ではありません

流動性推理が低いと聞くと、ショックを受けてしまう保護者の方も少なくありません。ですが、この数値はお子さんの認知特性(考え方のクセ)の一部を示しているだけです。
「流動性推理が低い=知的な能力全体が低い」という意味ではありません。むしろ、他の指標に高い力がある子もたくさんいます。
大切なのは、その子がどこに強みがあるのかを見つけて育てていくことです。

決して、努力不足や怠けではありません

新しい問題に取り組むときに戸惑ったり、方法を切り替えるのに時間がかかってしまうのは、性格や頑張りの問題ではありません。お子さん自身も「どうしたらいいか分からない」と困っていることが多いのです。
もしここで、「もっと頑張りなさい」「何度言ったら分かるの」などと責められてしまうと、不安や萎縮が強まり、さらに思考が固くなり「できなくなる」ことがあります。
まずは「この子は考え方の進め方に少し特徴があるだけなんだ」という理解から始めることが、とても大切です。

焦らず、長い目で見守ってあげてください

流動性推理の弱さは、一度の練習で劇的に改善するものではありません。数値そのものを上げようと焦る必要はありません。
それよりも、

  • できたことを一つずつ積み重ねる
  • 考えることに対して「安心できる気持ち」を育てる
  • 試行錯誤してみる経験を守る

これらが、長い目で見たときの「成長」に確かにつながっていきます。

適切なサポートは早めに

困りごとが強いまま気づかれずに過ごしてしまうと、無気力や自己否定につながり、不登校や不安の強まりといった二次的な困りごとが起きることがあります。
気になる様子が見られたら、学校や専門機関に相談しながら、その子に合う環境や支援を整えていけると安心です。

子ども自身の理解を助ける

成長してくると、お子さん自身が「なんで自分だけできないんだろう」と悩むことがあります。
そのときに「新しいことを考えるとき、ちょっと時間が必要なタイプなんだよ。でも、それは悪いことじゃないし、ゆっくりで大丈夫なんだよ。」と伝えることで、自己理解と安心が育ちます。
また「迷ったら深呼吸」「紙に書き出して整理する」などの対処のコツを一緒に身につけていくと、
将来「自分で困難を乗り越える力」へとつながっていきます。

まとめ

流動性推理が低いお子さんは、新しいことに向き合うときに、少し時間が必要なだけです。その子が持つ認知のスタイルであり、欠点でも劣っている証拠でもありません。

大切なのは、その子の特性を理解し、苦手な部分には少しサポートし得意な部分はしっかり伸ばしていくという寄り添いながら伴走する姿勢です。

焦らず、あたたかく見守りながらサポートしてあげてください。でも、一人で抱え込むことはありません。必要なときには専門家に相談しながらお子さんを支えてあげてくださいね。

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この記事の著者

房前 みなみ / 家庭教師のあすなろ 発達障害コミュニケーション指導者

体を動かすのが大好き、誰とでも仲良くなれるタイプです。学生時代は陸上部に所属し、負けるのが大嫌い。とにかく強くなりたくて部活が終わった後も自主練!「勉強よりも部活!!」というタイプでした。なので、勉強にはかなり苦労しました…。でも、母が頼んでくれた家庭教師の先生のおかげで、成績を上げることができました。今度は私も同じように勉強で困っているお子さんのために「家庭教師のあすなろ」のスタッフとして、少しでも勉強を好きになってもらえるようなサポートを心がけています。

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